ホームページ担当者の退職前に何を引き継ぐ?中小企業が運用を止めないための管理台帳
「ホームページ担当者の退職が決まったが、パスワード一覧を受け取れば引き継ぎは終わるだろうか」。この考え方には危険があります。ログイン情報があっても、登録メールが退職者個人のアドレスなら再設定できません。契約名義や支払方法が分からなければ、ドメインやサーバーの更新も止まります。
ホームページ担当者の退職前に必要なのは、パスワードの受け渡しではなく、会社が管理権限を持ち、後任が自分のアカウントで操作できる状態を作ることです。この記事では、中小企業がホームページの引き継ぎで確認する資産、権限、契約、制作データ、日常業務を、実務の順番で整理します。
ホームページ担当者の退職で、最初に止まるのは「再設定」
平常時は、担当者のブラウザーにログイン状態が残っているため、問題に気づきにくいものです。ところが退職後に端末を初期化したり、会社メールを停止したりすると、パスワード再設定や二要素認証ができず、ホームページへ入れなくなることがあります。
例:ホームページの更新は制作会社へ委託し、社内担当者は連絡だけしていたとします。退職後に請求書を調べると、ドメインの契約先、サーバーの管理画面、問い合わせ通知先が誰にも分かりません。ホームページは表示されていても、更新期限や障害時の連絡先を確認できない状態です。
この例で失われたのは、文章の更新方法よりも「誰が管理者なのか」という情報です。ホームページの引き継ぎでは、次の四つを別々に確認します。
- 所有:ホームページが会社名義で登録され、会社が管理先を選べるか
- 契約:退職前に契約先、契約番号、更新日、費用、支払方法が分かるか
- 権限:後任担当者が管理者として追加されているか
- 実務:引き継ぎ後も公開、問い合わせ確認、バックアップなどを再現できるか
担当者の退職時は、ホームページの引き継ぎ状況をこの四点ごとに判定します。
担当者の退職日が迫ってから調べ始めると、本人確認や認証の移し替えが間に合わない場合があります。退職の申し出を受けた時点で、ホームページの引き継ぎを人事・総務・経営者の管理事項として扱いましょう。
引き継ぎの起点はパスワードではなく会社の所有権
最初に、ホームページを成り立たせる資産を書き出します。WordPressの管理画面だけ確認しても不十分です。少なくとも次の範囲を、会社が把握しているか確認します。
- ホームページのドメイン:登録者、管理事業者、更新日、DNSの管理先
- ホームページを置くサーバー:契約名義、契約プラン、支払方法、障害時の窓口
- ホームページのCMS:管理者、編集者、プラグイン、テーマ、更新方法
- ホームページのメール・フォーム:送受信先、迷惑メール対策、通知先、保存期間
- ホームページ計測:Google アナリティクス、Search Console、タグ管理
- ホームページ連携の外部サービス:予約、決済、チャット、地図、SNS連携
- 制作物:原稿、写真、ロゴ、デザイン、ソースファイル、利用許諾
- 委託契約:制作会社、保守会社、業務範囲、費用、緊急連絡先
JPRSは、JPドメイン名の登録者を「ドメイン名を登録した組織や人」と説明しています。登録情報に変更がある場合は管理指定事業者への依頼が必要です。担当者個人や退職予定者の連絡先が登録されていないか、引き継ぎ時に実際の管理画面と契約書で確認してください。
Google タグ マネージャーは、管理者が一人だけだと、その人が対応できなくなった際にアクセスを失う可能性があるとして、複数の実在ユーザーの管理者設定と、組織内担当者による管理を案内しています。これは退職前のホームページ全体の引き継ぎにも使える考え方です。共有IDを皆で使うのではなく、会社管理のアカウントに後任担当者を追加します。

退職前のホームページ引き継ぎは権限を複製して試す
ホームページの引き継ぎは、退職者のアカウント名を後任担当者へ書き換える作業ではありません。先に後任担当者のアカウントを作り、必要な権限を付け、操作できることを確認した後で、退職者のアクセスを外します。この順番なら、退職前に権限不足が判明しても元担当者が修正できます。
WordPressでは、管理者、編集者などの権限によって実行できる作業が異なります。日常の原稿更新だけを行うホームページ担当者へ、サーバー設定まで変更できる権限を常時与える必要はありません。一方、退職時の引き継ぎでは、会社側に管理者権限を持つアカウントが残ることを確認します。
後任担当者は、元担当者の前で次の操作を実施します。
後任担当者が退職日までにホームページを自力で扱えれば、引き継ぎ漏れを発見しやすくなります。
- 後任担当者が自分のアカウントでCMSと計測サービスへログインする
- ホームページの下書きを作成し、プレビュー、画像追加、公開または予約設定を試す
- 引き継ぎ用の問い合わせを送信し、正しい共有先へ届くか確認する
- 退職後も使えるバックアップの取得先、実行履歴、復元を依頼する窓口を確認する
- Search Consoleや解析画面で対象のホームページと担当者権限を確認する
- 制作会社へ連絡し、契約先の会社名と後任担当者を認識しているか確認する
Search Consoleでは、所有者とユーザーで権限が異なり、ユーザー追加は所有者が行います。Google アナリティクスにもアカウント・プロパティ単位のアクセス管理があります。画面を見せてもらうだけでなく、後任担当者自身のログインで権限を確かめることが、ホームページ引き継ぎの合格条件です。

退職日から逆算してホームページの引き継ぎを進める
引き継ぎは、退職日にまとめて行うと漏れます。期間の長さは会社ごとに異なりますが、作業は次の段階に分けられます。
退職が決まった段階では、ホームページ資産の棚卸しを行います。退職予定の担当者の業務、使っているサービス、契約書、請求書、制作会社とのメール、引き継ぎ対象の定例作業を集めます。個人メール、私物端末、個人の認証アプリへ依存しているものは、会社管理へ移す方法をサービス提供元に確認します。
引き継ぎ期間中は、後任担当者の権限付与と操作テストを行います。ホームページ更新手順は画面写真だけでなく、「どの条件なら公開するか」「誰の承認が必要か」「失敗したら誰へ連絡するか」という引き継ぎの判断まで記録します。月初の数値報告、季節ページの公開、フォーム通知の確認など、頻度の低い業務も年間予定から拾います。
最終出勤日は、ホームページ担当者の退職時チェックとして、新しい権限と連絡先を再確認したうえで、退職者のCMS、サーバー、解析、クラウド、制作会社ポータルへのアクセスを削除します。必要に応じて共有パスワード、APIキー、復旧コードを更新し、ログイン中のセッションも終了します。IPAの内部不正防止ガイドラインも、異動・退職で不要になった利用者IDやアクセス権を速やかに削除する考え方を示しています。
退職後は、引き継ぎ確認として、ホームページの問い合わせ、公開予約、請求、更新通知が会社の共有先へ届くかを確認します。退職した担当者へ聞けることを前提にせず、管理台帳と契約先だけで対応できるかを点検してください。
制作会社への引き継ぎ確認は契約と実物を分ける
「制作会社にすべて任せている」という説明は、ホームページの引き継ぎ情報として曖昧です。制作会社がホームページを更新できても、ドメインの登録者、サーバーの契約者、原稿や写真の権利、デザインデータの保有者が同じとは限りません。
制作会社・保守会社には、次の点を確認します。
- 会社が契約している業務と、契約外の作業
- ドメイン、サーバー、CMS、計測サービスの各管理者
- 月額費用に含まれる更新、バックアップ、監視、障害対応
- 納品済みの原稿、画像、デザイン、ソースファイルの保管場所
- 画像素材、フォント、プラグインなどの利用条件
- 緊急時と通常時の連絡先、回答時間の目安
- 契約終了時に返却・移管されるデータと手続き
制作会社が代理で契約している項目は、直ちに変更すべきとは限りません。大切なのは、会社が現状を理解し、担当者の退職後も契約内容を説明できることです。退職前に、引き継ぎ台帳へ「自社管理」「制作会社管理」「共同管理」を分け、変更権限を持つ人も記載します。
ホームページ担当者が替わっても残る管理台帳
ホームページの引き継ぎ資料を一度作っても、更新されなければ次の担当者退職時に使えません。管理台帳は、一枚の表から関連資料へたどれる構成にします。パスワードそのものを表へ直接書くのではなく、会社で承認したパスワード管理方法や復旧手順の保管場所を示します。
台帳の列には、次を入れると管理しやすくなります。
- ホームページ資産・サービス名と用途
- 契約名義、契約番号、支払方法、更新日
- 管理画面のURLと社内担当者
- 管理者権限を持つ会社アカウントと引き継ぎ状況
- 二要素認証と復旧方法の保管先
- 制作会社・サービス提供元の連絡先
- バックアップ先と最終確認日
- 日次、月次、年次の運用作業
- 担当者変更の履歴と次回点検日
ホームページ担当者だけで台帳を保管すると、引き継ぎの属人化が残ります。経営者または管理部門が保管責任を持ち、担当者は実務情報を更新する分担にしてください。年に一度だけではなく、契約変更、担当変更、サービス追加のたびに台帳を更新します。
まとめ:引き継ぎ完了は後任が自力で操作できたとき
ホームページ担当者の退職前に行う引き継ぎは、パスワード一覧の受け渡しではありません。会社がドメイン、サーバー、CMS、計測、制作データ、委託契約を把握し、後任担当者へ必要な権限を付け、自分のアカウントで操作できる状態を作ることです。
まず、管理台帳へホームページ資産と管理者を書き出してください。次に後任の権限を作り、記事更新、フォーム通知、解析、バックアップ、制作会社への連絡を実際に試します。確認後に退職者のアクセスを削除すれば、運用を止めず、不要な権限も残しません。
担当者の退職が決まってから慌てないためには、在職中から複数の会社管理者と更新できる台帳を用意することが有効です。現在のホームページで、会社しか分からない情報ではなく「一人しか分からない情報」がないか、今週中に棚卸ししてみましょう。

- 中小企業診断士 / Webマーケティング支援
- 中小企業診断士として、中小企業のWeb集客・マーケティング支援に携わっています。SEO・MEO、SNS、Webサイト改善、アクセス解析などを中心に支援。SAGU BLOGでは、中小企業のWebマーケティングを「実務で使える形」に落とし込んで発信しています。

